ゲームブックのブームって、いつまでだったの?(データから見る)

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1986-1990で連続出版を継続した出版社と、その出版傾向

ここではゲームブックブームを支えた4社(社会思想社、東京創元社、富士見書房、双葉社)と、その内訳を見てみる。

そして各社、僕も少しはお世話になっているところなので、遊んだ中でお気に入りの作品と、今後読みたい「積読」作品を挙げてみる。

以降、内訳グラフは下記の要領とする。

  • 翻訳作品(青)
  • 国産作品(赤)
  • ゲームブック関連書籍(オレンジ)

また、文章中で〔〕内は国内発売年を表す。


社会思想社(最長シリーズの翻訳で活躍)

ゲームブックの出版社としては最も有名だったと思われる社会思想社。

グラフを見ていただくと分かる通り、ほとんどが翻訳物である。


代表作はなんといっても「ファイティング・ファンタジー」シリーズ〔1984-1991〕。

全33巻という物量は、打ち切られたとはいえ国内では最も長い部類のシリーズ作品だ。

とりわけ、第1巻「火吹山の魔法使い」の、50万部とも100万部とも言われる大ヒットは、同作者の「ソーサリー」シリーズ〔1985〕(東京創元社)と並んで、ゲームブックでは最大級の成功であろう。
…というか調べたら部数に諸説あったのでひっくり返った。


他には、「ギリシャ神話アドベンチャーゲーム」シリーズ〔1986〕や、社会問題を扱った「君ならどうする・食糧問題」〔1987〕といった、変わり種のゲームブックもあった。

ここは元々、ゲームブックのような子供向けの作品というより、人文科学系の書籍がメインだった会社のようで、ゲームブックのラインナップも総じて硬派な印象である。


そして忘れちゃいけないのが、ウォーロック。本雑誌も社会思想社が発行していたものだ。

21巻までは毎号必ず、200パラグラフほどのミニ・ゲームブックが収録されていた。単行本ではないので「殿堂」にはカウントされないものの、読者としては嬉しいオマケである。

ちなみに、たまにひょこんと出ている国産ゲームブックも、ウォーロックに掲載されたオリジナル・ゲームブックの単行本化作品だ。


以上のように、「殿堂」データだけを見るとそこまで目立たないが、実態としてはゲームブック業界に多大な貢献をしてきた出版社である。

なお、この会社も2002年をもって倒産した。

90年代には既に経営不振に陥っていたらしく、この点でもゲームブックの象徴的な存在である。

お気に入りの作品:モンスター誕生〔1988〕(ファイティング・ファンタジーシリーズ)
今後読みたい作品:ギリシャ神話ゲームブックシリーズ〔1986〕


東京創元社(翻訳国産ともに大作揃い)

いち出版社としては、「創元推理文庫」や「創元SF文庫」が有名な老舗。

ゲームブックのメーカーとしても、社会思想社と双璧をなす出版社と言っていいだろう。

「ソーサリー」4部作〔1985〕、「ドルアーガの塔」3部作〔1986〕といった大作や、ゲームブック・コンテストの入選作品、クトゥルーゲームブック〔1987〕など、幅広いラインナップを誇る。

さらには、人気投票では上位常連の「展覧会の絵」〔1987〕、「スーパー・ブラックオニキス」〔1987〕など、ファンに残した爪痕も大きい。


そのおかげなのか、僕は創元社のゲームブックをあんまり所持していなかったりする

というのも、2000年代に入って、創土社という出版社が、ゲームブックの復刊事業を始めたのである。もうやめちゃったけど。

その担当編集者が、ゲームブック界では最も志高きオタク(大賛辞)であり、思想もまあ強かった(根拠なき推測)

創土社が2013年にゲームブック事業から撤退するまでの間に出版したゲームブックは、計20作。うち17作が復刊作品である。

その復刊ラインナップがなかなかに偏っていて、東京創元社から10作(うちスティーブ・ジャクソンが4作、鈴木直人が4作)、二見書房から6作(全てハービー・ブレナン)、社会思想社からは1作といった顔ぶれだったのである。

これはもちろん、復刊された作品が選び抜かれた珠玉の逸品ということであるし、実際面白いのだが、そうでない作品を見るときに問題があった。

どうしても「創土社に選ばれなかった作品」という先入観込みで見てしまうのである。

そういうわけで、東京創元社のコンテスト入選作などはあまり買う気になれないのであった。


さて、出版傾向を見ると、翻訳物がだんだん縮小されて、88年以降は0になっている。

創元は85年の「ソーサリー」4部作で参入し、いきなり300万ものヒットを飛ばしたというから、その後もしばらくは別シリーズを模索したと思われる。

「ゴールデン・ドラゴン・ファンタジイ」〔1986〕と、「ユニコーン・ゲームブック」〔1987〕の2シリーズを、それぞれ1年間で集中的に出版している。それにしてもちょっと売れなさそうな感じの名前だ。

結局、第2の定番となる翻訳物のシリーズは現れなかった。

89年の「殿堂」には、各出版社のインタビューがあり、ここで創元の担当者は次のように述べている。

(以下要約)

  • 今のゲームブック読者は簡単なものでは満足しなくなっており、そういった熟練者のニーズに応えて高度な内容のゲームブックを提供している
  • 日本人作家の作品に力を入れるのは、翻訳物より読みやすいため
  • 日本のゲームブック作家は、質の面では米英の水準に達しているが、量の面ではまだまだ
  • コンテストの新人作家は技術的にはまだ一本立ちは難しいが、いずれ一流の作家になってくれるよう支援するのが当社の使命である

…ふむ。

ここでいう「高度な内容」というのは、「ネバーランドのリンゴ」シリーズ〔1986-1990〕の大ボリュームであったり、「ワルキューレの冒険」シリーズ〔1988-1989〕のパーティプレイだったりを指すのだろうか。


上の2作は、有名作ながらもネットだと賛否両論だったので、手を出せていないところなのだ。

紙と鉛筆をたくさん使うゲームは、それだけプレイが面倒臭くなってくる。

一度ハマると強く印象に残るのだけども、バーっと一気に遊んでその後はすっかり本を開かなくなりがちだ。

と、創元の話になるとついつい言い訳を捏ねてしまうのは、それだけネットで必修科目扱いされているからである。


ちなみに、この会社の国産ゲームブックはかなり分厚い
FFシリーズの倍くらいはあるんじゃないか。

作品数的なインパクトはない創元だが、小中学生みたいなおこづかいベースの収集家からすると、ここの作品を所有する満足感は相当だったに違いない。

お気に入りの作品:スーパー・ブラックオニキス〔1987〕
今後読みたい作品:ネバーランドのリンゴシリーズ〔1986-1990〕、コンテスト入選作(紅蓮の騎士シリーズ〔1988-1989〕、魔界物語シリーズ〔1988-1990〕)


富士見書房(マイナーだが傑作もある 翻訳メイン)

角川系列のレーベルで、ここは上の2社と違い、今でも元気?にTRPG関連書籍を出版している。

ブックオフでも背表紙だけは見かけるので騙されがちだが、中古で出回っているのはほとんどゲームブック作品ではないので注意。


後追いゲームブッカー的には、富士見書房といえば、影が薄いというイメージがある。

ネット上の情報が少ないのだ。

他の3社であれば、熱心な読者というのが、探せば必ず見つかるものなのだが、富士見書房のゲームブックにフォーカスを当てたサイトはついぞ見たためしがない


とはいえ、作品毎に見ると、決して人気がないわけではない。

「ブラッド・ソード」シリーズ〔1988-1989〕は、ゲームブックファンが最後に行き着く作品(と、後追いにはそう見える)。

コアなファンしか話題に上げないものの、だいたい褒めちぎられているのだ。

まず特徴的なのが、4種類の職業があって最大4人でのパーティプレイができる点。
当時の複数人用ゲームは、1人プレイ未対応の作品もあった。
しかし本作はどの人数でも遊べ、どの職業でもクリアできるようになっている。

このオリジナリティは、「ストーリー」「複数人協力型」「アナログゲーム」と、要素だけでいえば昨今のドイツ産ボードゲームと遜色ない。
ということは、冗談みたいな話だが、流行の30年先を行っていたことになる。

戦闘も独特のシステム。
方眼マップを使った、ターン制の戦略ゲームなのである。

テレビゲームでいうと、ファイアーエムブレムを簡略化したような感じだ。
ゲームブックとしてみると、めちゃくちゃ本格派である。

しかも、戦闘マップはどれも場面に即してデザインされた1点モノ

これが、戦闘のつど掲載されているのを見ると、果たして当時の人は、本当にコレを漏らさず遊んだのか、1つ1つ真面目に、ノートにでも書き写して、その上で駒を動かしていたのかと、疑念も湧く

このように実験的な作風でありながら、ゲームバランスは良く、完成度が非常に高い。とのこと


実は僕、デイブ・モーリスの文章があまり好きではない。演出にクセがあってどうも苦手だ。

例えばオープニングのシーンでいうと、僕の好きな「ソーサリー」シリーズ4部作なんかは、3巻だけ、開幕直後でいきなり戦闘に入るようになっている。
3巻はちょうど、ボスラッシュ的なバトルメインの内容であるからして、早々のギアチェンジといったステキな導入になっているわけである。

「ブラッドソード」シリーズは、1巻が番外編的な内容で、ブラッドソード自体出てこない。
そして、2巻から運命が動き出すのだが、2巻のオープニングで主人公は、いきなり老婆にタロット占いをしてもらっている

書き出しは
「これは避けがたい運命だね」老婆は、たき火の明かりに照らされたカードをじっとみつめながらいった。
といった調子である。

そしてここから、占いの結果発表が延々と繰り広げられる。
その長さは500字を超えてくる

あまりの白々しい伏線パートに、読んでいてなんだか恥ずかしくなってしまった。

そんなわけで、ゲームバランスの良さが分かるほどはやりこんでいないのである。
戦闘もぶっちゃけめんどい。


富士見書房の話に戻す。

他に出版傾向として言えるのは、TRPGの大御所であるAD&D(アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ)のスピンオフ作品が多いこと。

AD&Dを遊んだことがないので、本編との絡みの程は分からないが、方々のゲームブックブログで話題に上るような作品もいくつかある。


例えば「魔法の王国」シリーズ〔1987〕は、あらすじが「ハリー・ポッター」に激似ということで有名。

大魔法使いの息子として生まれた主人公が、魔法学校に入学して、校内に隠された秘宝を仲間とともに見つけ出すという話。

同級生ではないが、マルフォイ風の意地悪な学生キャラもいて、主人公とはライバル関係になる。


あまりにもハリポタなので、ウキウキで遊んでみたのだが、思っていたのとはちょっと違った。

本作では、魔法を学習するルートが2つあるのである。

善の魔法使いゼインに師事するルートと、悪の魔法使いであるベルドンが校長を務める、神秘科学アカデミーの生徒となるルートだ。

…ん?
校長が悪の魔法使い?

そう。
校長は確かに悪の魔法使いであり、本作のボスキャラでもある。

神秘科学アカデミーは、主人公の父であるランドールが創設した機関で、もともとは真っ当な学校であった。

しかし、ランドールの弟子であったベルドンの裏切りによって父は追放され、アカデミーは今や、ベルドンの隠れ蓑となっているのである。

事情を把握しているゼインは主人公に、アカデミーに行くのをやめて、自分のもとで魔法を学ぶよう提案したというわけだ。

ハリポタルートへ行くためには、この誘いを断る必要があるのだが、イベントの流れ的には、ここでゼインの提案に乗るほうが自然ですらある

そして誘いを断ると、微妙に気まずい雰囲気となってしまい、ゼインとはもう合えなくなる。

こちらとしては、ダンブルドアとの出会いを期待していただけなのに、なんだか気の毒になってしまった。


と、FFシリーズの王道かつドライな文章と比べて、より小説的ではありつつも、王道感のなさゆえか、フェイバリットにはならない感じだ。

「お気に入り」に挙げた「魔人の沼」〔1986〕のタイトルとか、どうよコレ

いったい誰が、沼での冒険を思い出にするというのだろうか(FFにも「サソリ沼の迷路」ってのがあるけど)。

でも、やってみたら結構面白かったんだ。これが。

ファンタジーでありながら、父の失踪事件の真相を追うミステリ仕立てで、寄り道をすればするほど、敵の背景とか、犯行に利用される裏道の存在が分かったりするんだ。

そんな、目立たないながらも、「なんかちょっと感心してしまう」作品が埋もれている出版社と言えるだろう。


ここは、ゲームブックのブームや衰退に対してどうして行こうみたいな意志はあまりなかったのか、それともウォーロック編集部に乗せられたのか、89年「殿堂」の出版社インタビューではTRPGの話ばかりしている。

出版の内訳も、89年からはナチュラルにTRPGへとシフトしている。
本稿では四天王扱いしてているものの、ゲームブックを出していた時期と集計期間がちょうど被っただけのようでもあり、運といえば運。


なお、国産作品は原作モノが多い。
「戦え!!イクサー1」「ダーティペア」〔いずれも1987〕など、80年代当時のOVAアニメらしいのだが、正直全く分からん。
おそらく手に取ることはないだろう。

お気に入りの作品:魔人の沼〔1986〕(スカイフォールシリーズ)
今後読みたい作品:スカイフォールシリーズ〔1986-1987〕の2巻以降


双葉社(オール国産 規格外の作品数)

これまでも何度か(良くも悪くも)話題に上っている双葉社。

内訳は怒涛の国産
海外産の翻訳作は1作もない。

ここはネット上でも賛否両論で、ゲームブック衰退の槍玉に挙げられることもあれば、「僕は結構好き」と性癖に目覚めて双葉ばっかりレビューするようなファンブログも存在している。


89年「殿堂」のインタビューでも、その特異な制作姿勢が垣間見える。

(以下要約)

  • 読者は小中学生のような若い方が多い
  • 継続的なファンの要望にこたえるために、月2冊のペースを意識している
  • マニアックには走らす、ジュブナイルや児童書のような立ち位置で、裾野を広げる役割を担っている

兎にも角にも質より量と言わんばかりの開き直ったスタイルである。


双葉文庫ゲームブックのラインナップは、大きく分けて3つ。

最も作品数の多いのがファミコン冒険ゲームブック〔1986-1992〕。

Wikipediaで数えたところ、シリーズは130作を超えている。

その名が示す通り、ファミコンゲームのノベライズなのだが、読んでみると、主人公がゲームのキャラではなく読者そのもの(ゲーム世界に迷い込む)だったり、原作の後日譚という建て付けオリジナルストーリー(悪魔城ドラキュラの舞台がハリウッド)だったりしてハチャメチャ

初期作である「マリオを救え!」〔1986〕を遊んでみると、まさに他愛のない児童書といった感じであった。

ゲームをそのまま文字起こししたような文面だったり、挿絵がゲーム画面のスクショだったりする。

他に、ファミコンゲームを原作としない完全オリジナルの作品もいくつか存在する。

同列にラインナップされてはいるものの、表紙をよく見ると「冒険ゲームブック」となっていて、「ファミコン」の記載がない。


ファミコン冒険ゲームブックの次にメジャーなのが、ルパン三世シリーズ〔1985-1991〕、全19巻。

単一主人公の作品としては国内最長のシリーズである。

これは好評だったのか、スピンオフ的に、ゲームブックではない一般小説として「アクションノベル」シリーズ〔1987-1991〕も展開された。


最後に、ペパーミントゲームブックシリーズ〔1989-1990〕。全14巻。

少女小説をベースとした作品群であり、恋愛要素完備の変わり種。

副題にわざわざ「純愛DOKIDOKIストーリー」と添えているようなテンションである。

これは、当時まだゲームブックが浸透していなかった少女に向けたシリーズとのことなのだが、シリーズの開始自体が比較的に遅い時期であったため、実際どれだけ乙女心に訴えかけることができていたかは疑問
浸透していなかったのではなく過ぎ去っていたのではないかという気がしないでもない。

作品の評判は総じてあまり良くないようだが、沙藤いつきによる「トラブルくらぶ事件ファイル オリーブたちのアブない放課後」〔1989〕は評価が高く、シリーズで唯一、続編が制作されている。

遊んでみると、確かに面白かった。

学園モノで、舞台となる私立白蘭学園は、お嬢様と御坊ちゃまばかりが通う金持ち校。

主人公の野原菜摘は、そこに転入してきた、ごく一般的な庶民である。
設定や主人公のネーミングがどことなく花より団子っぽいが、こちらの方が先発だ。

彼女が、いわゆるミステリ研究会に入部して、宝石泥棒スカート破きの犯人を追うことになるという筋書きなのだが、困ったことに王子様役が2人いる

しかも2人揃って、別ベクトルでギャップが魅力のキャラ設定ときた。

したがって、菜摘が犯人に襲われる場面では、「ユージ!」と叫ぶか、「葵さま!」と叫ぶかを選ぶことができる

もちろん、叫んだ方が助けに来てくれる。うれしい。

ユージ!!


さて、他社と比べても出版数が規格外に多い双葉社であるが、これは制作体制によるところが大きい。

双葉はあくまで販売者であり、制作行程は外部に委託しているのである。

そこで登場するのが、ゲームブック制作プロダクションだ。


ルパン三世ゲームブックなど双葉から多数のゲームブックを発表した塩田信之氏によると、実質的な編集作業も双葉ではなくプロダクションが請け負う形であり、執筆はプロダクションと契約しているお抱えのライターが行うというフローだったようだ。

私は一定の期間に決められた冊数のゲームブックを執筆するという形の契約スタッフです。

(中略)

《ルパン三世ゲームブック》や《ファミコン冒険ゲームブック》のような、他社に版権のある作品をお借りしてゲームブックを執筆するという立場では、特に今では特殊に思えますが、制作を進める上で打ち合わせなどを行うのは「ゲームブック班」のスタッフとの間だけ。出版社の編集者とも、版権を所有する会社の方とも基本的には直接会うことなく制作していました。

吉岡平、高橋信之、塩田信之(編集)、『ルパン三世ゲームブック さらば愛しきハリウッド復刻版』(株式会社双葉社、2021年)、485頁。

塩田氏が所属していたのは、「スタジオ・ハード」というプロダクション。

代表の高橋信之氏によると、もともとここが双葉社にゲームブック企画を持ち込んだんだとか。


86年までの制作体制は「スタジオ・ハード」1社のみであるが、87年になると、「レッカ社」が加わり、88年から更に「アミューズメントクラブ」(ただし、ここに所属する作家は高野富士雄1名のみ)を加えて、計3社体制となる。

以下に、双葉社ゲームブックにおける、年ごとの3社の内訳を示す。

  • スタジオ・ハード(青)
  • レッカ社(赤)
  • アミューズメントクラブ(オレンジ)

「スタジオ・ハード」については、これだけ量産してもなお筆が止まらず、双葉社が複数社体制となったことで生産能力に余剰が生じたのか、バンダイや勁文社など他の会社からも出版しはじめた

おかげで、88年の作品数ランキングは、双葉社と勁文社(10作中6作がスタジオ・ハード)の外注勢まさかのワンツーフィニッシュ
89年も、富士見書房のTRPG本を除けば、バンダイ(11作中10作がスタジオ・ハード)との実質ワンツーフィニッシュである。

忘れてはいけないが、この時、他の会社は続々と撤退している状況だったこと。

「スタジオ・ハード」だけが、他社の撤退を尻目になぜか目の色を変えて地獄に突っ込んでいくのである。
すれ違いざまにこれを見た他社は、一体何を思っただろうか。別に何も思わなかったんだろうけど

謎は深まるばかり。


双葉社は作品数が非常に多いため、今後読みたい作品というのはあまり絞れていない。

注目している作家としては、先述した沙藤いつき(橋爪啓名義での作品もある)、小説的に優れた樋口明雄、フラグ管理が緻密で作風も多彩な井上尚美あたり。
しかし、まだ認識していない作家もたくさんいるだろう。

先に挙げた塩田信之は、玉石混交との声をよく見かける。
これは、氏がデビュー当時まだ高校生であったことも関係するだろう。
羨ましい人生である。

とはいえ、氏の「終末の惑星」〔1988〕は双葉社の中でも上位の傑作と言われている。
これをプレイするのは楽しみだ。

お気に入りの作品:トラブルくらぶ事件ファイル オリーブたちのアブない放課後〔1989〕(ペパーミントゲームブック)
今後読みたい作品:(いい意味で)特になし


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