そもそもゲームブックって何ぞや?
管理人と同世代だと、1ミリも分からん人間の方が多数派なのではないか。
「ゲームブックが好きなんです」
といった時に、
「何それ?」から始まって、
「なんでそんなものが好きなの?」で終わる趣味トークのテンプレにおいて、ゲームブックは聞き手に多大な尺と脳内メモリを要求してしまう。
話の流れで、何の気なしに聞いてくれただけなのに、心苦しい限りである。
なにせ、ゲームブックが何なのかも、どう面白いのかも、伝えるのがけっこう難しい。
文章で説明しようとすると、いまいちピンと来ない感じになってしまう。
実際に読んだ方が速いのである。
それに、ゲームブックの定義を話している時間というのは、ゲームブック好きにとっても別に楽しくはない。
定義が好きなわけじゃないんだよね。
もし「かまいたちの夜」みたいなアドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)を遊んだことのある人であれば、話は早い。
要するに、「かまいたちのアナログゲーム版」だ。
「かまいたちの夜」は、1994年のスーファミゲーム。
ゲームブックが流行ったのは、その10年前の1984年である。
ファミコンで「スーパーマリオブラザーズ」が発売されたのが1985年で、「ドラゴンクエスト」第1作が1986年と、こういう時系列だ。
なので大まかに言えば、ゲームブックはファミコン世代のものということになる。
なおかつ、テレビゲームが普及する以前の存在だ。
当時、文庫本として、500円程度で書店に並んでいたそれは、ファミコンが発売されて以降しばらくの間、ファミコン買えない勢の憩いとなっていたようである。
さて、「かまいたちの夜」を知らない人には、どう伝えたものか。
まずもって、文章でストーリーを読んでいくゲームである。
ファミコンを引き合いに出したものの、基本的には小説であるから、アクション性はない。
そして、読んでいると、ところどころに選択肢がある。
場面ごとに、良い選択肢(正解)と悪い選択肢(ハズレ)があって、選ぶことによって展開が変わるのである。
エンディングに辿り着くのが目的。
などというと、「そりゃそうだろ」って感じだが、なにせ結構死ぬ。
そしてゲームオーバーになると、初めから読み直しとなるのだ。
これを繰り返して、正解を選び続けることでクリアを目指すのである。
以上がゲームブックの概要だ。
言葉で伝えてみても、やはり、なかなかイメージがつかないような気がする。
チャレンジしなきゃよかった。
そんな説明しにくい「ゲームブック」という媒体の、「何それ?」な部分を、どうにか解消しようと試みたのが本稿。
実例を見せた方が早いということで、話題の人工知能サービス「ChatGPT」に、ゲームブックを生成させてみた。
こうして出来上がった作品および作品未満のうち、お見せできそうな3作を紹介。
- 「魔法と剣の冒険」
- 「魔法学校の秘密」
- 「ネズミのチュー太郎」
- 「妖怪横丁の冒険」(後日作った作品。別ページに飛びます)
これで、「ゲームブックって何ぞや?」の疑問は解決である。
自慢じゃないが3作とも、見るに堪えるが遊ぶには堪えない程度のクソゲーだ。
ちなみに、もし作品未満の方を見たいのであれば、ご自身でChatGPTのアカウントを作成してもらい、同じ指示を打てば、ほぼ間違いなく見られる。
ところでこの「ChatGPT」、同じ指示をしても毎回違う答えを出してくるし、ゲームブックとして最低限の形式も満たせていない作品を提示してきたりもする。
そういうわけで、指示出しはまさに試行錯誤の連続であった。
例えば、「ChatGPT」では現状、長文の生成が困難である。
チャット形式ゆえの、字数制限の問題だ。
AIからの回答が字数制限に引っかかると、そこで文章が途切れてしまうのだ。
そんな時は、こちらから「続きを書いて下さい」と指示をすることで、続きを書いてくれる。
だが困ったことに、生成された「続き」の文章は、途切れる前の文章と噛み合っていない。
結局、文章が途切れた時点でボツ確定だ。
この課題を踏まえて、作品はどれも10パラグラフと短く指定した。
一般的なゲームブックのボリュームからすると、1/40サイズといったところか。
「パラグラフ」という言葉すらゲームブック用語であるから、遊んだことのない人からすれば何ぞや?なのだろうけども、AIは理解して生成してくれて流石だった。
通常の小説でいう「段落」とは違うモノなのだけども、これについてはまず実例を見ていただこう。
AIゲームブック「魔法と剣の冒険」
まずは、3作の中で最もオーソドックスな仕上がりと自負している作品。
その名も「魔法と剣の冒険」。
次のような指示を出して生成した。
AIゲームブック「魔法と剣の冒険」
タイトルとあらすじを冒頭に記載
パラグラフ数は10。10番でゲームクリア
ゲームオーバーの場合は1に戻る
魔法を選ぶか剣を選ぶかで展開が変わる
出来上がったゲームブックは以下。
2分くらいでクリアできると思われるので、興味があればお試しを。
あらすじ:主人公は魔法と剣を携え、魔法の力で知られる魔法都市に向かっていた。途中で、主人公は道中のトラブルに巻き込まれることになる。主人公の選択によって、その後の展開が変わっていく。
- 街道を進む
道中、ある集団に遭遇する。主人公はどうする?
a. 剣で戦う (2)
b. 魔法を使って攻撃する (3) - 剣で戦う
集団は武装しており、主人公は武器に傷つけられてしまう。主人公は撤退することになる。1に戻る。 - 魔法で攻撃
魔法で攻撃することで、集団を倒すことができた。主人公は道を進むことができた。4に進む。 - 森の中を進む
森の中で、主人公は一匹のクマに襲われる。主人公はどうする?
a. 剣で戦う (5)
b. 魔法を使って攻撃する (6)
c. 逃げる (7) - 剣で戦う
クマに対して剣で戦っても勝つことはできなかった。主人公は負傷してしまう。1に戻る。 - 魔法で攻撃
魔法で攻撃することで、クマを倒すことができた。主人公は道を進むことができた。8に進む。 - 逃げる
クマから逃げることに成功した。主人公は道を進むことができた。8に進む。 - 崖を登る
進む道に崖が現れる。主人公はどうする?
a. 剣を使って登る (9)
b. 魔法を使って登る (10) - 剣を使って登る
剣で登ることはできず、崖から落ちてしまう。1に戻る。 - 魔法を使って登る
魔法で登ることに成功した。主人公は目的の街に到着した。ゲームクリア。
コメント:
「街に行く」だけという目的のショボさはさておき、とりあえず形にはなっている。
「パラグラフ」というのは、①パラグラフ番号、②本文、③選択肢、④次に読むパラグラフ番号の4点セットである。
「パラグラフ」という呼び名でありつつも、一般小説でいう段落とは違って、「パラグラフ番号」という通し番号を振っているわけだ。
これはもちろん、選択肢と結果を結びつけるためのものである。
このパラグラフが10個で構成されているというのが、「10パラグラフ指定」の意味するところだ。
本作では、ゲームクリアのパラグラフを、10番と指定した。
実際、最後のパラグラフに到達 = ゲームクリアであることは多い。
そのためか、ルール説明の頭で、「ゲームブックとは、小説とすごろくが合わさったようなものです」といったふうに書かれていることもある。
…絶妙に分かるような分からないような感じだ。
AIは「パラグラフ」の意味を大枠で理解して、それらしく生成してくれる。
思っていたよりもそれらしくて感心したが、細かく見ていくと、形式に誤りがあることも多い。
たとえば、文章の繋がりを維持するのは結構難しいようだ。
ゲームブックでは、「次に読むパラグラフ番号」のパラグラフに行くと、「選択肢」を選んだ結果に相当する文章が続くべきである。
「魔法と剣の冒険」のパラグラフ1でいうと、「(a)剣で戦う」を選んだ場合、次に読むのはパラグラフ2となる。
そこで、パラグラフ2の文章は、剣で戦った結果の内容となるのが正しい。
だが、ChatGPTの生成においては、この暗黙のルールが守られていないことが多々あった。
ただ単に、選択肢に番号を振ってあるという、ガワだけの再現となってしまっているのである。
人間がゲームブックを作る場合、先に文章と選択肢を作って、それらをパラグラフ番号で繋げるわけだから、この間違いは起こらない。
AI特有の誤りといえよう。
ただしこれは、誤りを指摘することで、ある程度正すことができた。
えらい。
本作のジャンルはファンタジーである。
ファンタジーであること明確に指示したわけではないが、イメージ通りに生成してくれた。
ゲームブックと一口に言っても、内訳を見ると、まず国内産と海外産の作品に大別される。
国内のゲームブックは、ゲームやアニメのノベライズといった側面が強い。
具体的には、マリオやガンダムみたいなラインナップである。
ちなみに、マリオの一人称は「オレ」で、ルイージからは「兄貴」と呼ばれている。
一方で海外産は、数えたわけじゃないが半分くらいはファンタジー作品である。
そしてイギリス人作家の作が多い。
イギリス以外だと、アメリカ産があるくらいで、他の国は見たことがない。
原作のないオリジナル作品か、TRPG(アナログゲームの別ジャンル)の世界観だけを借りたオリジナル作が多い印象だ。
ファンタジーこそがゲームブックの王道ではあるものの、「魔法と剣の冒険」みたいに主人公が魔法を使えるパターンは、実のところ少数派。
基本的に、主人公はこれといったスキルのない戦士だ。
この傾向は、ゲームブックが選択肢によって作られているという都合によるものである。
ドラクエを想像してもらうと良いのだが、魔法というのは普通、一作品の中で何種類も使えるようになるものだ。
これを1つ1つ表現するとなると、その分だけ選択肢が必要になり、パラグラフ数が余計に増えてしまう。
だから、魔法システムはあまり積極的には取り入れられない。
とはいえ、「ソーサリー」4部作や「パンタクル」みたいに、魔法をうまくゲームブックに落とし込んだ名作というのも存在はする。
「魔法と剣の冒険」の指示で、「魔法を選ぶか剣を選ぶかで展開が変わる」というものがある。
この指示がなかった当初は、魔法と剣のどちらを選んでも展開が変わらなかった(両方とも単に「〜を使って敵を倒した」という画一的な結果になっていた)。
魔法を使うゲームブックは選択肢が余計に増えてしまうと説明したが、逆にいうと、その使い分けこそがゲームのキモとなる。
魔法を適切な場面で使用することが、そのまま魔法の上達を表現しているわけである。
その空気感を少しでも出せるようにしたかったが、10パラという制約もあり、本作では剣と魔法の使い分けに留めた。
「魔法学校の秘密」
続いての作品は「魔法学校の秘密」。
ジャンルは同じくファンタジー。
「魔法と剣の冒険」とぶっちゃけネタが被っているが、他のジャンルもいろいろ試して殆どがボツになった中で、これが偶然うまく生成されたというだけである。
他意はない。
お察しの通り?、ハリポタ風をイメージして作成したのだが、これは「魔力の杖」という作品のプロットがハリポタに激似であることから着想を得たもの。
次のように指示を出した。
ゲームブック「魔法学校の秘密」を書いて。
ジャンルはファンタジー。魔法の世界。
10パラグラフ。
魔法の仕掛けを掻い潜り、秘密のダイヤを見つけ出すとゲームクリア。
生成されたゲームブックはこちらである。
- あなたは魔法学校の廊下に立っている。先に進むにはどうする?
a. 右に進む (2)
b. 左に進む (3) - 右に進むと、ドアがある。どうする?
a. ドアを開ける (4)
b. 戻る (1) - 左に進むと、怪しい影が現れた。どうする?
a. 魔法で攻撃する (5)
b. 逃げる (6) - ドアを開けると、部屋の中には宝箱がある。どうする?
a. 宝箱を開ける (7)
b. 戻る (2) - 魔法で攻撃すると、影が消えた。どうする?
a. 先に進む (8)
b. 戻る (3) - 逃げて廊下に戻ることができた。どうする?
a. 先に進む (9)
b. 戻る (1) - 宝箱を開けると、秘密のダイヤが入っていた。おめでとう!あなたはゲームクリアです。
- 先に進むと、魔法学校の秘密が隠された部屋にたどり着いた。どうする?
a. 探索する (10)
b. 戻る (5) - 先に進むと、仕掛けられた魔法が解除された部屋にたどり着いた。どうする?
a. 探索する (10)
b. 戻る (6) - 部屋の中には謎のメッセージと共に、秘密のダイヤが隠されていた。おめでとう!あなたはゲームクリアです。
コメント:
この作品の特徴はずばり、マルチエンディングである。
指示を出したわけではない。たまたまだ。
後で見返して気づいたのだが、「10番でゲームクリア」という指示を出し忘れていたためかもしれない。
マルチエンディングの作品は、ゲームブックだとあまり多くない。
パラグラフが増えるし、フラグ管理が複雑になるからだ。
もはやこれって、作り手側のやりこみ要素なんじゃないかと思う。
個人的にもマルエンへのこだわりは特にない。
むしろ、1作1作はシンプルで、シリーズを展開することでバリエーションを増やしている方が好きだ。
昔は「いちゲームブックファンとして、珠玉の一冊を見つけるんだ」みたいな気概もあったものだが、いざ皆にそれを目指して作られると、消費がしんどくなってしまうことに気がついた。
名作が多すぎるのも考えものである。
本作でいうと、最も簡単なクリアルートは7番のエンディングだろう。
一言でいうと、「右の部屋に秘密のダイヤがあった」という、およそ冒険としての必要条件を満たしているかも疑わしいほどの薄っぺらさだ。
まるで、「家を出ようと思ったけど鍵がどっかいったので慌てて探した。普通にデスクの上に置いてあった」くらいのノリである。
次に簡単なのが、怪しい影から逃げるルート。
指示の中で「魔法の仕掛けを掻い潜り、秘密のダイヤを見つけ出すとゲームクリア」と指定したのに対して、「仕掛けられた魔法が解除された部屋にたどり着いた」という展開が生成されたのには苦笑した。
SASUKEみたく、安全なタイミングを見て飛び込む競技だったのかもしれない。
「ネズミのチュー太郎」
最後は「ネズミのチュー太郎」。
ジャンルは、何だろう…。
元ネタは特になし。
ミニ・ゲームブックということで、小さな生き物の小さな冒険を作ると良さそうと思い、試してみたもの。
指示はこちら。
ゲームブック「ネズミのチュー太郎」を書いて。
10パラグラフ
人間の家の中を冒険し、餌を盗み出すのが目的。
餌を盗むことに成功するとゲームクリア。
人間に捕まるとゲームオーバー(パラグラフ1に戻る)。
作品はこちら。
- あなたは人間の家に入る。部屋中には物が散乱しており、小麦粉をまいた跡も見える。あなたは何をするか?
• 食料庫を探す: 2
• 部屋を探索する: 3 - あなたは食料庫に到着した。チーズとパンがあるが、罠に気をつけなければならない。あなたは何をするか?
• チーズを取る: 4
• パンを取る: 5 - あなたは部屋を探索していたが、人間に見つかってしまった!逃げろ!
• 逃げる: 1 - あなたはチーズを手に入れた。さあ、次はどこに向かう?
• 寝室に向かう: 6
• リビングに向かう: 7 - あなたはパンを手に入れた。さあ、次はどこに向かう?
• 寝室に向かう: 6
• リビングに向かう: 7 - あなたは寝室に到着した。人間が寝ている!しかし、そばには美味しそうなチーズがある。あなたは何をするか?
• チーズを取る: 8
• 戻る: 1 - あなたはリビングに到着した。テーブルには人間が食べていた料理が残っている。あなたは何をするか?
• 料理を調べる: 9
• 戻る: 1 - あなたはチーズを手に入れた。もうすぐゲームクリアだ!
• 窓のところに向かう: 10 - あなたは料理を調べたが、何も手に入らなかった。さあ、次はどこに向かう?
• 寝室に向かう: 6
• リビングに向かう: 7 - あなたは窓から外に脱出した!おめでとう!ゲームクリア!
コメント:
本作に関しては、言いたいことも特にない。
元ネタを考えなかったのは失敗だった。
ただただ作品が1つできあがっただけで、説明のネタになってくれなかった。
記事的には、本作をまるっとなかったことにしても良かったのだけど、せっかくできたので貼った。
完成品はマジ希少だから。
強いてコメントするとすれば、人間は部屋を散らかすことはあるが、部屋に小麦粉を撒いたりはしない。